人間は、なぜ、生きがいのある楽しい人生が送れないのか。なぜ、悩み事がつきないのだろうか。
すべての悩みの根源は、自己本位の欲望にあるといっていい。人は、物欲、愛欲、名誉欲などに振り回され、道徳、宗教、地位などに執着しながら生きている。それがいけない。この執着を棄てれば、誰でも子どものように、大らかに生きていくことができる。
私たちの生活は、どうしても欲望が先行しがちだ。そして、それに支配されるようになると、考え方の幅も狭くなり、それがストレスになる。自閉症、学校嫌い、恋愛、進学、就職、人間関係の悩みなど、ストレスはさまざまだ。
しかし、こうしたあらゆる種類の心の悩みを取り去り、執着を棄て、ワクにとらわれない心になれれば、今まで考えもしなかった、まったく新しい道が拓けてくるのだ。そして、私が教えている「洗心術」を知れば、そんな生き方ができるようになる。
洗心術というのは、道家の精神衛生術である。道家というのは、前五七〇年頃に生まれたといわれる老子の教えが中心になっている。その老子の説をまとめ、肉付けしたのが荘子である。
そこで、後の人たちは「老荘の学」といったが、この老荘の学の中心になる考え方は、「無為自然」という言葉に集約されるだろう。
自然の流れに逆らおうとしたら、ムダなあがきをする。「そんなことをするなよ」というのが“無為”だ。人の道も、地の道も、天の道も、自然に従うのがよろしい、といっているのである。
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