老荘学における人間観
道家の入門書である『玄門必読』の基本概念は、陰陽の理にある。これは人生にも、宇宙の現象にも、すべてあてはまる哲理である。上があれば下、右と左、山と川、男と女、すべての事象も相対的な調和である。
これは二元論ではない。陰が極まれば陽になり、陽が極まれば陰になる。陽の中にはすでに陰があり、陰の中にも陽がある。
健康についても同じことで、陰と陽の調和がとれていないと、具合が悪くなったり、病気になったりするのは自然の理である。文明が変動化し、自然破壊が進めば進むほど、人間の方はより自然に戻らなければならないわけで、たとえば交通機関が発達して、歩く機会が少なくなればなるほど、導引をして歩かない分をフォローしなければならないのである。
老子が美と醜、静と動など、対立する概念を相対としてとらえているのも、また弱の高揚を強調しているのも、固定観念でものを見ない思想の柔軟さを示すもので、老子が哲学書としてばかりでなく、「人生の書」としても高く評価されるゆえんでもある。
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