「自分にない気を補ってくれる人とつき合う」

あるメーカーの人から、こんな話を聞いたことがある。新しい会社をつくるときは、新製品のプランを立てられる優秀な才能の人間だけでなく、生産や流通ルートにくわしい人間も欠かせないというのである。

どちらが欠けても、会社としてはやっていけなくなる。スタートするときには、この両輪がそろっていても、そのうちにケンカ別れすることになり、そうなると、ほとんどの場合、業績が下がり、倒産という結果を招くことが多いらしい。

これと同じようなことは、メーカーでなくてもいえる。

たいへん繁栄している設計事務所があった。小学校からの同級生二人が、一人は図面を、一人は外交を担当し、二人三脚で成績を上げていた。業績も順調に伸びていたし、お客の評判もよく、順風満帆だったそうだ。

ところが、図面を担当していた人間が、妙な欲を起こしてしまったのだ。

「外交をやる人間なら、いくらでもやとえるだろう。図面はオレが作っているのだから、オレだけの会社にしてしまえば、もっと儲かるはずだ」

そう考えて、外交担当と別々に仕事をするようになった。だが、計算の上では、単純にそうなるはずが、そのもくろみははずれてしまった。
図面は描ける。だが、顧客からの細かい注文をとりつぐ人間がいない。それに、外回りをして、大きな物件の計画などを素早く聞き込んでくる人間がいなくなってしまった。当然のことのように、大口の注文は少なくなるし、これまでの得意先も、どんどん離れていってしまったのだ。

人間にはそれぞれ、得意、不得意がある。話は上手だが仕事の荒っぽい人、仕事は綿密だが人づき合いの下手な人など、性格との関わりで、仕事のやり方も違ってくる。こうした凸凹がうまく噛み合うことが、コンビを組むときの重要なポイントなのである。凸と凸、凹と凹ではうまく組み合うはずがない。

ホンダは、本田宗一郎氏と藤沢武夫氏という絶妙のコンビによって、世界の大メーカーにまで成長した。これも技術屋の本田氏と、実務派の藤沢氏との組み合わせが成功していたからだ。

自分の足りない「気」を補ってくれる人間と仕事のチームを組むことが、ビジネスにおいても、たいへん重要なポイントになってくるのである。