気力人間は戦う前からすでに相手を制している

ビジネス戦争という言葉もあるように、ビジネスには戦いがつきものだ。天下分け目の一戦という場合には、乾坤一擲(けんこんいってき)、気合を入れて臨むことが大切になる。戦いは、「気」と「気」の力くらべといった一面も持っている。相手を飲むくらいの「気」があれば、戦う前からすでに勝敗はあったようなものだ。

昔の武道家は、試合の前に立ち小便をするのが習わしだった。小便が勢いよく出て、泡立っているようなら「この試合は絶対、勝てる!」と確信できたからだ。勢いによって、その日の「気」の強さをはかっていたのだが、「気」が勝者敗者の明暗を分けることを、動物的な勘で知っていたわけだ。
早くから天才棋士の呼び名が高く、将棋界のビッグタイトル七つのうち、竜王、名人、棋聖、王位、王座、棋王の六冠を制し、弱冠二十三歳にして、将棋界のトップに君臨しているのが羽生善治氏。彼は、一分間に三百手から四百手を読むという、凡人には想像もつかない頭脳の持ち主だ。
だが、世の中には優れた才能も多く、将棋界には羽生氏と同じぐらいの力を持つ天才予備軍も数多くいるらしい。そんな中で、なぜ、羽生氏が飛び抜けた力を発揮するようになったのだろうか。その謎を解く答えは、「気」にあった。

将棋界には細かな階級分けがあるが、A級に属するのはわずか一〇名と限られている。このA級の順位戦の勝利者が、事実上、名人位の挑戦者となる暗黙の決まりがある。
さて、この順位戦で、羽生氏が、将棋界に中原時代を築いた中原誠・前名人と対局した時のことである。

戦いの日、先に着いた羽生氏は、堂々と、床の間を背に座って、中原氏を持ち受けたのだ。床の間を背に座るのは、言うまでもなく上座である

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